結論:ディロードは“トレーニングの一部”である
筋トレにおけるディロード(Deload)とは、「成長を最大化するための準備期間」です。
決して“休む”ことや“サボる”ことではありません。
むしろハードに追い込んだ先で最大限の伸びを引き出すための、戦略的な一手だと考えてください。
ディロードとは何か?
ディロードとは、一定期間、ボリューム(総負荷量)や強度(使用重量)、頻度(週あたりの回数)を意図的に下げることで、身体の疲労を回復させ、トレーニング効果を持続させるための調整期間です。
具体的には以下のような調整を行います:
- ボリューム:セット数やレップ数を半分〜3分の1に
- 強度:通常より5〜10%ほど重量を下げる
- 頻度:普段の3〜5回を2〜3回に減らす場合も
ポイントは「トレーニング自体は続ける」という点。
完全な休養ではなく、あくまで“負荷を落としたトレーニング”を継続する形が基本です。
アクティブレストとの違い
似たような概念にアクティブレスト(積極的休養)がありますが、両者は明確に異なります。
項目 | ディロード | アクティブレスト |
---|---|---|
負荷 | 減らすが継続 | かなり軽い or 種目変更 |
種目 | 通常の種目をそのまま | 有酸素・ストレッチなど別種目も可 |
目的 | 疲労除去+技術維持 | 回復と心理的リフレッシュ |
対象者 | 中〜上級者向け | 初心者〜上級者すべて可 |
アクティブレストは“軽く動く”ことそのものが目的であるのに対し、ディロードは次のフェーズへスムーズにつなげるための布石です。
いつ・どのように行うか?
ディロードは「毎○週に1回やる」といった固定的な周期でも良いですが、最適なのは「主観的疲労感」と「客観的パフォーマンス」の両方を見ることです。
ディロードを検討すべきサイン
- セット後の疲労感が抜けない
- 重量は落ちていないが「動作の質」が明らかに悪化(上がり方が重たい、挙上スピードが下がる等)
- フォーム崩れが頻発、関節の違和感が続く
- 睡眠や食事を整えても回復が追いつかない
ディロードのやり方(例)
- 通常の75%程度の重量で実施(例:普段100kg → 75kg)
- セット数を半分に減らす(例:5セット → 2~3セット)
- RPEを8→6まで下げる(※RPE未使用なら「余裕をもって終える」感覚)
注意点として、「調子が悪い=すぐディロード」ではなく、あくまで“継続的な兆候”が出ているときに行うことが重要です。
よくある誤解と注意点
❌ ディロード=筋肉が落ちる
→1週間の軽負荷では筋量・筋力は基本的に落ちません。むしろ、疲労が抜けることでパフォーマンスが上がることすらあります。
❌ 調子悪いから“その日だけ”軽くやる
→それは単なる当日調整。ディロードは意図して1週間ほど継続的に行うものです。
❌ フォーム練習の週=ディロード
→フォームを崩さずに扱える重量であればディロードに“見せかけた練習週”も可能ですが、目的が「疲労除去」でないなら別枠で考えるべきです。
ディロードを“あえて入れない”という選択肢
ここまで読んで「じゃあ毎回サイクルの後にディロードを必ず入れた方がいいのか?」と思った方もいるかもしれません。
結論から言えば、「疲労の兆候がないなら、無理にディロードを入れる必要はない」です。
特に初心者やトレーニングを始めたての場合はディロードが必要なほどの使用重量を扱うことが少ないのと伸び率が高いのでディロードを入れることでオーバーリーチ(超回復)を逃す可能性があるのでお勧めしません。(初心者で疲労が強い場合はそもそもメニューの強度が高すぎる場合がほとんどです)
特に以下のようなケースでは、あえてディロードを挟まずに次のサイクルに進んでも問題ありません:
- トレーニング後の回復がスムーズで、次回に影響がない
- 高重量・高頻度ではなく、適正な負荷で長期的に進行できている
- 自主的な感覚・フォームの質ともに明らかな低下がない
- サイクルごとのボリューム調整があらかじめ設計されている
ディロードはあくまで「必要な人が、必要な時期に、戦略的に入れるもの」です。
むしろ“毎回形式的に入れる”ことでトレーニングの流れが断絶し、適応の波をうまく乗りこなせなくなるケースもあります。
まとめ:ディロードは“成長の仕込み期間”
ディロードは、単なる「お休み」ではありません。
それは“伸びる準備”をする期間であり、戦略的に挟むことでトレーニング効果を長期的に最大化できます。(飲食店などの「仕込み」のようなものです)
特に中〜上級者、あるいは週4回以上しっかり追い込んでいる人にとっては、むしろ避けて通れない“回復戦略”でもあります。
「疲れてきたから何となく1日オフ」ではなく、「この週は意図してディロードしよう」という意識を持つことが、次の爆発的成長につながります。
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